小説を書いていると、原稿そのものより先に、設定メモのほうが育ってしまうことがあります。
人物一覧、時系列、世界観、用語集、参考資料、取材メモ。気づけば「これ、もう半分百科事典では?」みたいな状態になることもあります。
そんなときに相性がいいのが、Google の NotebookLM です。NotebookLMは、アップロードした自分のソースをもとに要約や質問応答、整理をしてくれる「AIリサーチツール兼思考パートナー」として案内されています。
NotebookLMは、ChatGPTやClaudeのようにゼロから何でも書かせるというより、自分の資料をもとに考える補助役として強いのが特徴です。GoogleはNotebookLMの大きな違いとして、ユーザーが選んだ資料に AI を“ground”させる、つまりソースに基づいて答えさせる点を挙げています。小説用途で言えば、設定資料やプロットメモ、調べ物メモを入れて、それを土台に整理や確認をしてもらうイメージです。
NotebookLMは小説執筆に使えるのか
結論から言うと、かなり使えます。
ただし向いているのは、本文をどんどん自動生成させることより、資料整理、設定管理、取材メモの要約、情報の見通しをよくすることです。NotebookLM は、ソースを分析して複雑な内容を明確にするツールとして公式に案内されており、アップロードした資料に対して要約、質問応答、つながりの発見を支援する設計です。
小説を書く人にとって、これはかなり大きいです。
なぜなら、創作で本当に厄介なのは「書けないこと」だけではなく、情報が増えすぎて自分でも把握しきれなくなることだからです。主人公の年齢、脇役の口調、事件の順番、登場した固有名詞、過去話との整合性。頭の中では分かっているつもりでも、数万字を超えたあたりから、だんだん記憶力が文学的でなく人間的になってきます。そんなとき、NotebookLM はかなり頼れる「資料係」になってくれます。これは、NotebookLM が複数ソースの要点整理や質問応答を前提とした製品であることから自然に言える使い方です。
NotebookLMの特徴
自分の資料をもとに答えてくれる
NotebookLM のいちばん大きな特徴は、自分で入れた資料に基づいて答えてくれることです。Google は公式ブログで、NotebookLM は従来のチャットAIと違って、ユーザーが選んだソースにモデルを grounded させると説明しています。つまり、「ネットのどこかで見たっぽい一般論」より、まず自分のメモや資料に寄せて考えてもらいやすいわけです。
小説用途では、これがかなり助かります。
たとえば、人物設定メモ、年表、世界観説明、参考にした資料、章ごとのあらすじを入れておけば、それらをもとに「主人公が第3章時点で知っている情報だけを整理して」「この事件までの流れを時系列でまとめて」といった依頼がしやすくなります。
要するに、自分の作品資料に詳しいアシスタントを一時的に雇う感じです。締切前の脳みそより、落ち着いて考えてくれます。
複数ソースをまとめて扱いやすい
NotebookLM では、無料版で 100 ノートブック、1ノートブックあたり最大 50 ソース、1ソースあたり最大 50 万語まで扱えるとヘルプで案内されています。ローカルアップロードは 200MB までで、ページ数の上限はないとされています。小説の設定資料や取材メモ、PDF、Webページ、Google ドキュメントなどをかなりまとめて扱いやすい構成です。
これは長編やシリーズものを書く人にとって、とてもありがたい仕様です。
作品が進むほど、設定は枝分かれしていきます。しかもメモは、ひとつのノートにきれいに収まってくれません。あちこちに散った資料をある程度まとめて持ち込めるのは、かなり実務的です。
もちろん、入れれば入れるほど何でも魔法みたいに解決するわけではありませんが、少なくとも「資料が散りすぎて、まずどれを見ればいいのか分からない」という状態は減らしやすいです。
要約や質問応答が得意
NotebookLM は、ソースを入れると自動で要約や質問候補を出し、そこから深掘りできる設計として案内されています。Google の紹介では、資料をアップロードすると要約やキートピック、聞くべき質問の候補が出て、そこから資料について質問できるようになります。
小説では、これをそのまま応用できます。
たとえば、「この設定資料で重要な要素を5つ挙げて」「この人物関係で対立の火種になりそうな点を整理して」「この年表の中で、読者に早く見せるべき情報はどれ?」といった聞き方ができます。
自分で書いた資料なのに、自分で読むと逆に頭に入ってこないことってありますよね。あれを少しマシにしてくれる感じです。
日本語でも使える
Google は 2024 年 6 月、日本語を含む 200 以上の国と地域で NotebookLM を順次提供すると発表しています。日本語対応が明示されたことで、日本語の創作メモや資料整理にもかなり使いやすくなりました。
小説用途では、やはり日本語で自然に資料を扱えるかは重要です。
英語圏向けツールだと、機能は魅力的でも「いや、そこまでして使う元気は今日はない……」という日があります。その点、NotebookLM は日本語でも使えるので、設定資料やプロットメモをそのまま持ち込みやすいのが強みです。
NotebookLMでできること
1. 設定資料の整理
NotebookLM がいちばん力を発揮しやすいのは、設定資料の整理です。
人物設定、世界観メモ、用語集、時系列、章ごとの概要などを入れておいて、「登場人物ごとにまとめて」「時代背景の情報だけ抜き出して」「重要設定だけ短く整理して」と頼む使い方が向いています。NotebookLM は、ユーザーが用意した資料をもとに要約し、複雑な内容を明確にすることを目的にした製品として紹介されています。
創作中は、設定を作ること自体が楽しくて、つい増やしがちです。
問題は、その後です。増えた設定は、だいたい放っておくと野生化します。NotebookLM は、そうした設定を飼いならすのに向いています。
全部が完璧に整うわけではありませんが、少なくとも「どこに何が書いてあるか分からない」問題はかなり減らせます。
2. 取材メモや参考資料の整理
NotebookLM は、取材メモや参考資料の読み込みにも相性がいいです。Google の案内では、Google Docs に加え、PDF、Webサイト、YouTube動画などさまざまなソースを扱えるとされており、複数資料をまたいだ理解に向いています。
たとえば、歴史ものや職業ものを書く場合、参考資料が増えやすいです。
そのとき NotebookLM に資料を入れて、「この資料群から時代背景として重要な要素をまとめて」「警察手続きに関する記述だけ整理して」のように聞けます。もちろん、最終的な史実確認は自分でやるべきですが、資料を読む体力の節約にはかなり役立ちます。
資料読みで一日が終わると、なんだか仕事をした気にはなるのに原稿は1文字も進んでいない、という創作者あるあるも多少は防ぎやすいです。
3. 時系列の確認
小説で地味に危険なのが、時系列です。
第2章では3日後だったのに、第6章ではいつの間にか翌週になっていたり、キャラクターの移動日程がどう考えても瞬間移動だったりします。NotebookLM に年表や章概要を入れておくと、「出来事を時系列順に並べて」「この人物の行動履歴だけ抜き出して」といった確認がしやすくなります。
AI がすべての矛盾を自動で完璧に見つけてくれるわけではありません。
ただ、資料に質問できるだけでもかなり違います。自分で全部見返すと見落とすことでも、質問形式にすると気づきやすくなることがあります。人間はときどき、自分の書いたメモにいちばん弱いです。
4. 長編の情報管理
NotebookLM は、トピックごと・作品ごとにノートブックを分けて扱う設計です。Google も「ノートブックをテーマやプロジェクトごとに作る」使い方を案内しています。
この構造は、小説と相性がいいです。
たとえば、「作品本編」「外伝」「設定資料」「取材用ノート」といった分け方もできますし、シリーズごとにノートブックを分けることもできます。長編になるほど、書く力より整理力が物を言う場面が増えます。NotebookLM はそのへんの「地味だけど大事な仕事」を受け持ってくれるタイプです。
派手ではないけれど、こういう存在がいちばん助かることはあります。編集ソフトでいう自動保存みたいなもので、目立たないけれど、いなくなると困ります……。
NotebookLMが向いている人
NotebookLM は、次のような人に向いています。
設定資料が多い人、長編やシリーズものを書く人、取材メモが増えがちな人、そして「本文生成」より「資料整理」が悩みの中心になっている人です。NotebookLM は公式にもリサーチ支援と資料理解の補助を主目的とした製品として位置づけられています。
特に、すでに自分の中に材料がある人とは相性がいいです。
ゼロから物語をひねり出すというより、「ある材料をうまく扱いたい」人向けです。逆に言えば、何もない状態から本文をどんどん書かせたいなら、NotebookLM は主役ではありません。その場合は ChatGPT や Claude のような対話型AIのほうが入りやすいです。これは製品の設計思想の違いによるものです。
NotebookLMが向いていないケース
NotebookLMは便利ですが、小説専用の文章生成ツールではありません。
そのため、「今すぐ物語の続きを書いて」「このシーンをドラマチックに書き直して」といった本文生成を主に期待すると、少し役割が違います。GoogleもNotebookLMを AI research tool / thinking partner と位置づけており、創作専用の執筆ツールとしては案内していません。
また、入れる資料がほとんどない場合は強みが出にくいです。
NotebookLMは、ソースがあってこそ活きます。逆に言うと、設定メモが1枚しかない状態なら、まだ出番ではないかもしれません。そういう時期は、NotebookLM より先に、まずメモ帳か散歩のほうが効くこともあります。
活用例
活用例1:人物設定の整理
人物設定メモをまとめて入れて、「名前、年齢、立場、目的、秘密、口調の特徴で整理して」と頼む使い方です。
こうすると、情報がばらけたままの状態からかなり見やすくなります。NotebookLM の要約・質問応答機能を、作品資料の再編成に応用する形です。
一覧にしてみると、「この人だけやたら設定が濃い」「逆にこの重要キャラ、意外と何も決まっていない」みたいなことが見えてきます。
創作では、脳内にあると全部ちゃんとしている気がするのですが、表に出すと案外そうでもありません。その残酷な現実を、NotebookLM は静かに教えてくれます。怒らずに。そこは偉いです。
活用例2:世界観メモの圧縮
世界観メモが長くなったときに、「重要要素だけ300字でまとめて」「読者に最初に見せるべき要点だけ抜き出して」と頼む使い方です。
NotebookLM は複雑なソースの要約が得意なので、長い資料を短く整理する用途に向いています。
これが役立つのは、世界観が悪い意味で“作者だけが楽しい”状態になったときです。
設定を作るのは楽しいです。でも、読者に必要な情報は意外と少ない。NotebookLM に一度圧縮させると、「あ、見せるべきはここだけか」と整理しやすくなります。これは創作実務上かなり便利です。
活用例3:取材資料の整理
資料系の小説では、取材メモや参考資料を入れて、「このテーマで重要な論点をまとめて」「この資料から作品に使えそうな要素を整理して」と聞く使い方ができます。NotebookLM はPDFやWebサイトなど多様なソースを扱えるため、こうした用途にも向いています。
取材資料って、読んでいると賢くなった気はするのに、肝心の原稿にはなかなか変換されません。
NotebookLM は、その間にある「理解した内容を作品に使える形に並べ替える」作業を少し楽にしてくれます。もちろん、面白い物語にするのは作者の仕事ですが、資料の交通整理まで一人でやらなくていいのはありがたいですね。
NotebookLMを小説で使うときのコツ
資料をある程度まとめてから入れる
NotebookLM は、資料があるほど活きます。
人物メモ、世界観メモ、章概要、年表などをある程度そろえてから入れると使いやすいです。無料版でも 1ノートブックあたり最大 50 ソースまで扱えるので、作品ごとの資料置き場として十分実用的です。
聞き方を具体的にする
「整理して」だけだと少し広すぎます。
「時系列順に並べて」「人物ごとに分けて」「矛盾がありそうな点を挙げて」のように、出してほしい形を先に決めると使いやすいです。NotebookLM は質問応答型でソースを掘るツールなので、聞き方が具体的なほど実務で役立ちやすいです。
本文生成の主役にしすぎない
NotebookLM は、あくまで資料整理の相棒として考えるのが向いています。
本文そのものをどんどん書かせるより、設定・資料・構造を整理する役として使うほうが満足度が高いはずです。
無料で使えるのか
NotebookLM には無料版があり、ヘルプでは無料版の上限として、100ノートブック、各ノートブック最大50ソース、各ソース最大50万語、1日あたり50回のチャットクエリ、3回の音声生成が案内されています。より高い上限や追加機能は有料版で提供されます。
小説用途なら、最初は無料版で十分試しやすいです。
まずは1作品分の設定資料を入れて、「これが本当に便利か」を体感してみるのがいいです。便利だと思えば使い続ければいいですし、合わなければ別の道具を使えばいいだけです。創作ツールは、性能表より相性です。靴と同じです。高機能でも足に合わなければ歩きにくいです。
まとめ
NotebookLM は、小説を自動で書いてくれる魔法のペンではありません。
ただ、設定資料、時系列、取材メモ、世界観、人物関係を整理する道具としてはかなり優秀です。Google も、NotebookLM をソースを分析して複雑さを明確にする AI リサーチツールとして案内しており、その性格は創作の資料管理とよく噛み合います。
本文そのものをどう書くかは、やはり作者の仕事です。
でも、書く前と書いた後の整理まで全部ひとりで抱えるのは、なかなかしんどいです。NotebookLM は、その「地味だけど重い荷物」を持ってくれるタイプのツールです。設定資料が増えてきて、「そろそろ自分でも把握しきれないぞ……」と思い始めたら、試してみる価値は十分あります。
小説執筆ツール比較
以下の記事で、小説執筆に使えるAIツールを比較・紹介しています。参考にしてみてください。



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